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読書感想文:感情とはそもそも何なのか

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著:乾 敏郎
出版社:ミネルヴァ書房

 

タイトル通り「感情とはそもそも何なのか」ということを現代の科学的見地より解説している。大変面白かった・・・が、多くの人にとってはそうではないかもしれない。例えるなら、映画の内容ではなくそれがスクリーンに投影される仕組みを語っているような本だからだ。

タネ明かしをすれば「体内の状態を脳が理解すること、そしてその原因を推定することで生じるもの」が感情だという。どういうことか。

生きていくうえで私たちのカラダは絶えず状態を確認し、適切な状態に保とうとする仕組みがある。あるいは予測される変化に備えておく仕組みがある。カラダの状態、たとえば血圧や心拍数や体温だとかの状態は気分に直結しているらしい。心拍数が上がってドキドキしている。それが単に吊橋を渡る危険に準備したものだというのに、眼の前にいる異性を原因と解釈したりすることがある。この相手に興奮したのだと、恋ではないかと錯覚する。

本書で解説されるそのメカニズム、特に予測と予測誤差を埋めていくという機構は、運動や知覚、価値判断や学習、そして気分障害やうつ病なども説明できて面白い。感情に乏しいとか、他人に共感できないとか、極度の心配性だとか、そういったものも説明できてしまう。それは体内感覚を把握する感度が鈍いとか、予測信号が強くなってしまうとか、予測誤差をうまく埋められないとか、そういったプロセスのなかで生まれるもの、という次第に。

そのような機能不全?に対処する方法は、また別のはなし。
とはいえ、アタマの中で発生する嫌な思い出のループを瞑想が断ち切る事例などを見ると、仏教のメソッドに手がかりが溢れているように思う。