しばらくエンジンをかけていないと思ってZXR400に火を入れた。久しぶりに走らせてみると「すこぶる面白い」から参ってしまう。気持ちよさに関しては、新しいバイクが最良というわけではないふしぎ。・・・そもそも自分は何をこんなに「気持ちいい」と感じているのだろう。ときには感覚に没頭せず、身体の反応を客観視しながらライディングしてみる。
そうして走っていると、怖いという感覚が実によくできたシステムだとわかる。カーブでの倒し込みであれ濡れた路面であれ、初めて経験するゾーンではヒヤリとした感覚が生まれるものだ。怖さが生じれば無茶はしなくなる。恐怖にブレーキをかけられることで、私たちは比較的安全な範囲で経験を積み重ねていくことができる。習熟や理解が進んで恐怖が生まれなくなれば、次のステップに進む準備ができたということだ。
新しい仕事場で取る電話も、大人数を前にしたスピーチも、怖さが生まれるのは「経験の薄さ」ゆえかもしれない。何度もやっていれば怯える必要もなくなり、ストレスは消える。逆に、何かの行動の結果が悲惨なものであったら、次回はもっと強い恐怖が伴うだろう。口をひらく度に暴力を受け続ければ、人は声を出すこともできなくなる。私たちに組み込まれた安全装置が、私たちの行動を制約する。