finders keepers

バイクが楽しい。写真が楽しい。釣りが楽しい。

チンクエチェントが教えてくれたこと

f:id:summarit:20060813224122j:plain

そういえばもう13年になる。イタリアから輸送する途中に9.11の事件が起きて、どこかの港でずいぶん足止めをくった。それがはじめて買った自分の車、FIAT500Lだった。

 納車された日からエンジンはよく止まった。30年は経過している旧車であるし、ラジオすらついていないし、何事にも「こんなもんだろう」と思って受け止めるしかない。必要にかられてプラグやキャブ、ポイントなどを自分でいじるようになっていくと、調子を維持する術が身についてくる。シンプルで性能が低いだけに、手をかけた分だけ調子が良くなるのはうれしかった。エンジンを降ろしてクラッチの交換までやったのはいい思い出だ。

 

こういう車に過剰な期待をしてしまうと、物事はつまらなくなっていく。高速なんて怖くて乗れないし、幹線道路の上り坂でエンジンが止まって周囲に迷惑をかけたこともあるし、セルが壊れて同乗者に押しがけしてもらったこともある。買い物を済ませてでてきたら、駐車場のわずかな傾斜に負けて車があさっての方向に向かっていたこともある。夏は暑く、冬は凍えるほど寒い。問題は極めてシンプルであって、捨てるか、受け容れるか、ということであった。自分は受け容れることを選んだ。

  

f:id:summarit:20050505124224j:plain

この車との生活が、自分の性格をすっかり変えてしまったのだと思う。暑いのなら涼しい時間に乗ればいいし、寒いならコートを着こめばいい。エンジンがかからなければ諦めて電車に乗り、大事な用事のときにアテにしたりはしない。そんなペースで付き合ってみると、チンクはこの上なく楽しい相棒になった。車は何も変わっていないのに、である。

 

何かや誰かに感じるストレスは、自分が勝手に生み出しているもの。
今はもう手元にないチンクを思い出して、少しばかり自省してみる。

 

- Noctilux-M 50mm F1.0 / Kodak 400TX & EPSON R-D1